独学で予測不可能な時代を生き抜く!『知的戦闘力を高める 独学の技法』

「独学」が必要な時代の到来
▼チャールズ・ダーウィン
「思うに私は、価値のあるものはすべて独学で学んだ。」
今の時代は、「独学」によって自身の学びを常にアップデートしていく重要性がより高まっていると言われています。
理由としては下記のような時代背景が挙げられます。
<いま「独学」が必要な4つの理由>
・労働期間が長くなるにも関わらず企業の寿命は短くなる
・時代の変化が早いため、学んだ知識がすぐに使えなくなる
・「専門家」よりも「領域横断型」の人材が求められている
・イノベーションの加速により、社会の仕組みが急激に変わっていく
一言でいうならば、さまざまな領域に渡る広範な知識をタイムリーに学び続けていく必要があるということです。
現在の教育機関の多くは「専門家の育成」を前提にしており、またタイムリーにカリキュラムを変更できる柔軟さもありません。
よって、時代に適応する学びを得るためには「独学」しか手段がないのです。
独学の技法を学べる一冊
「独学」が求められている時代において、どのように学びを得ていくことが効果的なのか。
この疑問に道しるべを与えてくれるのがこちらの一冊、山口周さんの著書『知的戦闘力を高める 独学の技法』です。
「未曾有の事態に適応できる知性を身につけたい」
「効果的に学びを得ていくためのシステムを構築したい」
「複数の分野・領域を横断できる知識を身につけていきたい」
このような想いがある方には、ぜひ読んでいただきたいと思います。
著者の山口周さんは、必要な知識を独学で学んできた
本書の著者、山口周さんは組織・人材領域を専門とする外資系アドバイザリーファームで働きながら、ビジネススクールの教員や著者活動など、幅広い分野で活躍されている方です。
現在はビジネスの指導をする立場にある山口さんですが、経営学、マーケティング、組織論、心理学などの実践的な学問について正式な教育を受けたことはなく、全て独学で学んできたそうです。
本書には、独学で学んだことを活かして仕事で成果を挙げてきた山口さんが構築した「独学の技術体系」のエッセンスが余すことなく詰まっています。
独学を効果的に行う4つのモジュール
それでは、「独学の技法」の中身を見ていきましょう。
本書では、巷に溢れる「独学術」に見られるような「インプット術」だけを取り上げたものとは異なり、独学を「システム」として捉え、その構成要素について解説されています。
具体的には、下記の4つが「独学」というシステムの構成要素になります。
<独学を効果的に行う4つのモジュール>
①戦略
②インプット
③抽象化
④ストック
では、4つのモジュールについてそれぞれ見ていきます。
①戦略:戦う武器の集め方
戦略とは、「何を学ぶか」を決めることです。
「何を学ぶか」を考える時に多くの人は「どのジャンルを学ぶか」を考えがちですが、ここで注意点があります。
それは、「独学の方針は、ジャンルではなくテーマから決める」ということです。
テーマとは、「自分が追求したい論点」のことです。
例として、著者の山口さんは下記のようなテーマを持って独学に励んでいます。
<テーマ例>
・イノベーションが怒る組織とはどのようなものか
・美意識はリーダーシップをどう向上させるのか
・共産主義革命はいまだ可能なのか
・キリスト教は悩めるビジネスパーソンを救えるか
では、テーマを決めた上でジャンルはどのように考えれば良いのか。
ポイントは、複数のジャンルの掛け算を考えることです。
なぜかというと、一つのジャンルのみではユニークなポジションを作りにくいからです。
スティーブ・ジョブズをはじめとして、高い水準の創造性を発揮した人の多くが「新しいアイディアとは、新しい組み合わせによって生まれる」ことを指摘しています。これは、独学の戦略を立てる上で肝に命じておくべきです。
②インプット:生産性の高いインプットの技法
ここでは、具体的な「読書の技法」が紹介されています。
押さえておくべき前提は、本の読み方は「読む本の種類」によって変わるということです。
主な本の種類として、「ビジネス書」と「教養書」が挙げられますが、それぞれどのように読めば良いのか。
本書では、下記のように述べられています。
ビジネス書:できるだけ名著を抑え、読書ノートは作らない。狭く深く読む。
教養書:雑多な本を気の向くままに読み、読んだら読書ノートを作る。広く浅く読む。
ビジネス書は、定番・名著と呼ばれる本の数がそれほどないため、それらを押さえておけば基本的には事足ります。
また、内容がビジネスに直結しており、狭い範囲を繰り返し読むので「ビジネスへの示唆を抽出する」ための読書ノートを作る必要性が低いと思われます。
一方で、教養書は定番・名著と言われるものが確定している点ではビジネス書と同じですが、ジャンルが多岐に渡るためそれらを全て読むわけにはいきません。
また、内容が必ずしもビジネスへの示唆に直結していないため、後でどんな形で役立つか、読んだ時点では分からないことも多いため、後で立ち返って考えたり参照したりする際に、読書ノートが必要になるというわけです。
③抽象化:「知識」を「武器」に変える
独学によってインプットした知識を、仕事の成果につなげるために必要なことが「抽象化」です。
特に教養書でインプットした知識は、そのままでは仕事に活用することができないため、この工程が重要になってきます。
抽象化とは、「要は〇〇だ」とまとめてしまうことを言います。
言い換えるなら、個別の事象から、人間の組織や社会の本性についての洞察を抽出することです。
抽象化の具体例を以下に記します。
・事実
蟻塚には一定程度遊んでいる蟻がいないと、緊急事態に対応できずに全滅するリスクが高まる。
・抽象化
平常時の業務量に対して、処理能力を最適化してしまうと、大きな環境変化が起こった時に対応できず、組織は滅亡してしまう可能性が高い。
学んだ知識を抽象化しなければ、ただ知識を知識として丸覚えしているだけで、様々な局面への応用がきかなくなってしまいます。
変化の激しい時代で「未曾有の事態」に適応していくためには、抽象化のプロセスが非常に大事になってくるのです。
知識の抽象化には、技術的・論理的な手続きがあるわけではないため、とにかく場数を踏むしかありません。
知識を得るたび、下記について自分なりに考えることを何度も繰り返してみてください。
①面白かった「事実」
②ビジネスや実生活に対する「示唆」
③具体的な行動の「仮説」
④ストック:創造性の高い知的生産システムの構築
インプットした情報を自由に活用するための仕組みづくりがこの工程の役割です。
具体的なストックの手順を以下に記します。
<知的生産システムの構築法>
①アンダーラインを引きながら本を読む。
②アンダーラインを引いた箇所を再び読み返し、重要な箇所を選別する。選別した箇所には付箋を貼っておく。
③付箋を貼った箇所を転記する。抽象化で得た事実・示唆・行動をセットで書き記す。
③の転記先は、「後から精度の高い検索ができる」ものを選ぶ必要があります。
検索ができないと、何をどこに書いたのか探すことに労力を使いますし、それを覚えておくことに脳のリソースを消費してしまうからです。(ちなみに著者の山口さんはEvernoteを使っているようです)
また、ストックを構築する主な目的は「学んだ知識を組み合わせて自分ならではの概念を構築する」ことにあります。
組み合わせをするために必要となるのが、「タグ付け」です。全く別の情報源からインプットされた情報が、たとえば「イノベーション」という同じタグを付けられることによって初めて横に並べられることになるのです。
全く異質な情報源からの組み合わせが、思いもよらない発見を生み出すことがあります。多様な気づきの機会を得るために、ぜひタグ付けを実践してみてください。
以上が、知的生産システムの構築法および活用法となります。
教養の11ジャンル紹介
本書の最後に、教養として学ぶべき11ジャンルと、各ジャンルのオススメ書籍(計99冊)が紹介されていました。
以下に11ジャンルを記載しますので、ぜひ教養を学ぶ上での道しるべにしていただけたらと思います。
(オススメ書籍99冊はさすがにこちらには掲載しきれないので、気になる方はぜひ本書をお読みになってみてください)
1. 歴史
2. 経済学
3. 哲学
4. 経営学
5. 心理学
6. 音楽
7. 脳科学
8. 文学
9. 詩
10. 宗教
11. 自然科学
最後に
以上、「独学の技法」の紹介でした。
個人的な感想としては、効果的な独学のプロセスをここまで詳細に行動ベースで落とし込んで解説している書籍は他にない、と感じました。オススメ書籍も紹介されているので、読後にすぐアクションを起こせるのも大きな特徴だと思います。
変化の激しい時代、しかも外出すらも制限されているこの状況下においては、いかに他人の力に依存せず「独学」で自身の知的戦闘力を高めていけるかが大きな結果を分けます。
未曾有の事態に適応できる学びの重要性が高まっている今だからこそ、ぜひ本書で解説されている「独学の技法」を活用してみてはいかがでしょうか。
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