フォルクスワーゲンの排ガス不正問題から考える規制のあり方【厳しいほどいい?】

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「規制」とは、特定の目的を実現するためにルールを設け、物事を制限すること。近年の新型ウイルスの影響で、「規制」を多く見かける世の中になってしまいましたね。しかし、その規制は厳しければ厳しいほど良いのでしょうか?

規制は秩序を守るためにあるはず。ですが、その規制によって不法な行為を生んでしまったとしたらどうでしょうか?その規制は一体何のためにあるのでしょうか?

今回は自動車業界の規制項目である「排気ガス」について、不法行為を行ったフォルクスワーゲンを取り上げます。

排ガス規制はそもそも環境や健康により良い自動車を生み出すためのものでした。ところがあまりの厳しさからフォルクスワーゲンは違法に規制をクリアしてしていたのです。

規制とはどうあるべきか、厳しくすればよいのか、はたまた緩和すればよいのか。ご紹介する事例と共に、皆さんも規制のあり方について考えてみませんか?

創立80年!フォルクスワーゲンは歴史ある企業

「国民車」を意味するフォルクスワーゲンは、1937年のドイツで誕生します。当時はナチスドイツの時代であり、国民全体に車を普及させる目的で作られた自動車メーカーでした。

ナチスドイツを率いたアドルフ・ヒトラーは、当時デザイン制作会社を立ち上げていたポルシェ創業者のフェルディナント・ポルシェに自動車製作を依頼します。

依頼を受けたポルシェは研究を重ね、今なお根強い人気を誇る「ビートル」ことフォルクスワーゲン・タイプ1を製作しました。ビートルは2003年に生産が終了するまで約2153万台をも売りあげ、単一モデルの世界最多量産記録として語り継がれています。

その後も「ゴルフ」「パサート」といった人気車を製造し、またアウディ・ポルシェ・ランボルギーニ・ブガッティ・ベントレーといったブランドを傘下に置くなど、幅広い車両を取り扱う企業として、フォルクスワーゲンは名を広めてきました。

しかしその一方で、とある問題が発覚します。それがフォルクスワーゲンによる排ガス規制逃れ問題です。

フォルクスワーゲンは規制を逃れるためにどんな違反をした?

排ガス規制とは国や自治体ごとに大気汚染や健康被害をもたらす物質の規定値や上限を定めているもの。自動車の排気ガスには一酸化炭素・窒素酸化物・炭化水素類・黒煙といったものが含まれており、当然大気の汚染や健康への被害が懸念される要因となっています。

フォルクスワーゲンの本拠地であるEUは特に排ガス規制が厳しいことで知られており、2030年から40年までにガソリン車の販売禁止を目標にしています。有害物質の既定値も厳しく、また超過した際の罰金も重くのしかかるとか。

このように有害物質を規定値以内に収めるように求めているのが排ガス規制なのですが、2015年、フォルクスワーゲンは長きに渡ってこの規制をクリアするためにとある秘策を使っていたことが発覚します。

その秘策とは、車両の排ガス検査中はプログラムを切り替えて有害物質を極限まで抑え、通常の走行時には燃費やパワーを重視するプログラムに切り替わるようにしたのです。つまり検査時にのみ規制をクリアするソフトを車両に搭載していたということです。

こうしたソフトはディフィートデバイスと呼ばれていて、法律に違反するもの。しかも、フォルクスワーゲンはこのソフトを外注し、受け取る際にも違法性を認識した上で車両へ搭載しました。

このソフトの使用が明らかになってからというもの、当時フォルクスワーゲン筆頭にEUで盛り上がりを見せていたクリーンディーゼルエンジンの評価は地に落ちてしまったといいます。

さて規制の厳しさから違法な手段を取ったフォルクスワーゲンですが、果たして問題は企業側だけにあるのでしょうか?厳しすぎる規制に問題はないのでしょうか?

【実現不可?】排ガス規制は年々厳しさを増している

前述の通り排ガス規制は年々厳しさを増しています。EUでは2025年に15%、2030年に30%のCO2排出量規制強化も実施される方針だとか。

EUで働く自動車エンジニアからは、「欧州でこれから実施される燃費規制は現実離れしている。とても実現できるとは思えないほど厳しすぎる」といった意見も上がるほど。

有害物質の排出による影響はこれまで多くの議論を巻き起こしてきました。特に自動車の排出ガスは環境への影響が大きいとされており、パリ協定で制定された2050年CO2削減目標に向けて各国は環境規制に貪欲です。

しかしその規制の厳しさから、業界関係者の中でもクリアは困難な自動車メーカーが多いとの見通しが優勢でした。

排ガス規制は自動車産業を守るためのものでもあります。SDGsやクリーンエネルギーなどにも通ずる環境に配慮した車を作ることは、時代のニーズに則した商品を提供することにもつながるでしょう。

ところがクリアができないほど厳しい基準を設けてしまったことで、環境に配慮した商品が作られないばかりか、蓋を開けてみれば当時環境に配慮した技術を持つ企業の筆頭として君臨していたフォルクスワーゲンが、違法行為に手を染めていたのです。

果たして規制を強めることは歓迎されるべきなのでしょうか?

規制の厳しさについてあなたはどう考えますか?

今回ご紹介したフォルクスワーゲンの排ガス規制問題は、違法な手段で規制を逃れた同社の対応が批判の的となりました。しかし、厳しすぎる規制は産業を衰退させかねないという意見もあります。規制の見直しを求める声もありますが、実現には至っていません。

自動車エンジニアの中でも「厳しい規制こそが新たなエンジンを作る」という見解がある一方で、「規制が厳しすぎると開発コストがかさみ販売価格に転嫁されてしまう」「競争力が失われる」といった声もあります。同じ業界でも賛否両論のようです。

規制の厳しさによる弊害は自動車業界以外にも起こっています。

例えば新型ウイルス流行でロックダウンなど厳しい行動制限が敷かれた都市では規制の強化に抗議する数万人規模のデモが起き、デモ参加者と警官が衝突したケースもあるといいます。さらに規制の強化でアルコール依存・家庭内暴力の件数が増えていた地域も確認されました。

あまりに厳しい行動制限は経済や暮らしに打撃となり、国民に不満が溜まってしまうのです。

違法行為は許されるものではありません。ですが規制はただただ厳しくすればよいのでしょうか?規制に従わない企業や人々は無条件に淘汰されていくべきなのでしょうか?まただからといって規制は無闇に緩和して良いものなのでしょうか?

フォルクスワーゲンが違法行為に手を染めずに済んだ道は、どこにあったのでしょうか?

皆さんもぜひ規制の厳しさとその効果についてご自身でも考えてみてはいかがでしょうか。

 

参照:
読売新聞
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yuya

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複数メディアでの記事執筆やYouTuberの原稿作成など、掛け持ちでライターをしています。本職は物流。ピアノ・ギターが趣味でセッションにも参加中。気になった...

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